船狂ち爺さんの

「私の予科練記」第9回

新兵教育中の日々




ここで、練習生の日課の中での、記憶を追って見ます。

先ず、05:55に総員起こし5分前の号令、ラッパは鳴らない。 この時は、既
に、教員・教員助手は、寝室に我々を叱咤するため準備を整えておる。

海軍の5分前の習慣は、有名で、現代社会でも、通用する習慣である。

総員起こし5分前では、ゴソゴソ起き出して、服装を整えたりしては成らないのであ
り、只管次ぎの号令の為の心構えを整えることであるので、ゴソゴソしたら、コ
ラァーと一発来る。

勇ましい総員起こしのラッパが鳴り響き、「ソゥーイン・オコォーシ」とゆったりと
した口調(海軍の号令の多くは、艦内で拡声器を通じてなされるので、ゆったりした
口調での号令の 掛け方が多い。例えば、戦闘中でも、トォーリィ、カジー、ヨォー
ソ
ローと言った具合に、一寸間延びした感じ)で3回程度繰り返し号令される。

前に述べましたが、陸式と異なり、ラッパのメロデイーが、1回終わリ、ラッパの意
味を確認してから初動に移る決まりに成っています。

さあー、静かであった寝室は、教員が、おそそーい、おそーいと、大声で怒鳴りなが
ら、バッターで床を叩いての叱咤激励が響き亘り、我々は、毛布の整頓、制服の着替
え、小用を済ませ、兵舎前に整列し、朝礼場の運動場へ向うのである。

馴れというものは、大したもので、数日もすると、起床から、兵舎前整列まで、10分
内外で120数名の分隊全員が集合を終わるようになる。

服装は、前にも述べましたように、事業服は支給されていませんので、第3種軍装
(略装)である。 

朝礼場では、次ぎつぎに、各分隊が所定の位置に整列し、終った分隊から指揮台上に
立っている、副直将校に、当直練習生が、「第○○分隊。総員○○○名。異常無し」
と大声で報告する。全分隊が報告が終ると、副直将校が、「本日の日課は予定表通り
とか何とか??」と達して、次いで、朝の海軍体操といった段取りになる。

この、報告の順序は、用意が整った分隊から、順番にする訳であるから、競争原理が
働き各分隊一刻も早く出来るようがんばらされる。海軍では、遅れをとることを「込
みやられる」と言って、一番厳しく鍛えられ攻撃精神培養に繋げた教育がなされ、
色々な、場面で、込みやられるなーーと叱咤された。

体操隊形に展開して、上半身裸になり、誘導振という所作で始まる第2海軍体操に入
る。時として、副直将校の号令により天突き体操も加えられた。

朝礼場から、隊列をくみ、駆け足で兵舎に帰り、開け(解散のことを開けと号令す
る。)に成るのであるが、集合に遅れたり、寝室での起きあがり動作に気合が入って
いないと、罰直になる。この時は、兵舎何周駆け足といった類の罰であった。

時間は、06:30位になっていたであろう(この辺の記憶は怪しいぞ。。。。)
食卓番(各テーブル群から3名の食事当番、テーブル群は、12名内外)は、烹炊所に食
事を受け取りに出向き、他の者は、小休の合いまに、洗顔を済まし、食卓の準備に懸
かる。

つづく


最終更新(1998/12/12)